ほくろ
ホクロは母斑細胞からなる皮膚良性腫瘍です。そのため、取り除くためには、外科手術により切除するほかありません。手術には色々な方法がありますが、円筒状の刃でくりぬくパンチ切除と通常のメスで切除する方法、または電気メスや炭酸ガスレーザーを使い、焼き切る方法があります。手術による治療は、一回で済みますが、手術後は感染予防のためしばらく手術部位を濡らすことができないこと、また手術の傷跡が残るという欠点があります。しかし小さいもの、特にシワがある部位にあるものなら、手術の傷跡はシワに隠れてあまり目立たないこともあります。
最近では、傷跡を残さない超短パルスレーザー(Qスイッチ・レーザー)とうものも出てきました。このレーザーでは、色素を持つホクロの細胞だけを選んで破壊するため、ケロイドにならないという利点があり、小さなホクロでは、数回レーザー治療を行えばほとんど消失します。しかし、母斑細胞が多い大型のホクロは、何度も通院する必要があり、その結果、治療間隔が短いと本来持っている皮膚の色が白く抜ける可能性があります。また盛り上がったホクロは、Qスイッチ・レーザーで治療をしても、あまり平らになることはありません。現在では、直径7mm以下のホクロが癌になったという報告はないのですが、癌になるのを心配するのであれば、レーザー治療よりは外科的に完全に取り除いた方が安心だと思われます。
ホクロのように見えても、基底細胞癌や老人性角化腫、または悪性黒色腫といった皮膚癌のことがありますので、自己判断せずに、皮膚科専門医を受診し、本当にホクロかどうか診断を受けて下さい。
粉瘤
粉瘤(アテローム)とは、一般的に“しぼうのかたまり”と考えられることがありますが、実は、本当の脂肪ではありません。皮膚の下に袋状の構造物ができ、本来皮膚から剥げ落ちるはずの垢(角質)と皮膚の脂(皮脂)が、剥げ落ちずに袋の中にたまってしまってできた腫瘍の総称です。時間とともに少しずつ大きくなっていきます。身体のどこにでもできますが、顔、首、背中、耳のうしろなどにできやすい傾向があります。粉瘤は、皮膚科医が最も診察する機会が多いもののひとつです。良性の腫瘍ですが、ときに化膿して真っ赤に腫れ上がったりすることがありますし、見かけは似ていても全く違う腫瘍もたくさんあります。皮膚腫瘍の自己診断は非常に危険です。一度皮膚科専門医の診察を受け、正しい診断を受けることをお勧めします。
粉瘤の治療
治療については、強い炎症を伴う場合は、すみやかに切開し、膿を外に出しますが、特に赤みや痛みを伴わない場合は、外科的切除手術により、表面の皮膚ごと切り取ってしまいます。巨大なものでなければ、局所麻酔の日帰り手術が可能です。また、へそ抜き法(くり抜き法)という簡単な手術法もあります。
脂肪腫
脂肪腫は、皮下に発生する軟部組織の腫瘍の中では最も多くみられる良性の腫瘍です。
まだ小さい時に出来ると考えられていますが、ゆっくりと大きくなるため発見は遅く、40~50歳代に多く見られます。また、太った人によく見られる症状でもあります。
身体の色々な部分に発生しますが、特に背中、肩、首などに多く、次いで腕やおしり、太ももなど、からだに近い方の手足にみられます。大きさは数mm径の小さなものから、直径が10センチ以上に及ぶものまでいろいろです。通常、痛みなどの症状は無く、皮膚がドーム状に盛り上がり、柔らかいしこりとして触れます。
脂肪腫の治療
脂肪腫の治療は基本的に手術による摘出です。摘出術では、ほぼ腫瘍の直径に一致するように切開し、被膜を破らないように周囲組織から剥がして、摘出します。摘出後は、血が溜まるのを予防するため十分に止血し、必要に応じてドレーンを挿入、圧迫固定します。
巨大な脂肪腫では脂肪吸引法も適応となることもありますが一般的ではありません。