アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、アトピー素因によって引き起こされる慢性の湿疹です。小さな子供から大人までどの年齢層にもみられ、生後2~3か月ごろから、治りにくいかゆい湿疹が顔から徐々に肘や膝の内側、体などに広がり、慢性に続きます。また、全身の皮膚が乾燥しやすくなります。
一般的に季節によって悪化と改善を繰り返し、特に乾燥しやすい冬期や発汗が増える夏季に悪化する傾向があります。アトピー性皮膚炎の場合、9割方の患者様は思春期頃までに自然軽快しますが、残念ながら1割の患者様は成人期に移行してしまう場合もあります。また、近年は成人期になってから発症する方も増えています。
アトピー素因とは以下の2つを意味します。
- 本人や家族が気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎になったことがある。
- ほこり・ダニ・食物などに対するアレルギー抗体を作りやすい体質を持っている。
アトピー素因は遺伝傾向があり、ご両親のどちらかにの1.の症状のいずれかがあると、お子様もアトピー素因を引き継ぐ確率が高くなります。喘息・鼻炎・結膜炎・皮膚炎のどの症状が発症してくるかは個人差があります。
アトピー素因の原因はまだ完全には解明されていませんが、1.のような遺伝的な体質と2. のような環境的な原因が複雑に関係し合っており、ひとつの要素に対してだけ対策を打っても症状がよくなるとは限らないのです。例えばご自宅のハウスダスト除去などを行ったとしても、遺伝的な要因や別のものに対するアレルギー抗体を作りやすい体質であれば、なかなか症状の改善が見られない場合などがあります。
アトピー性皮膚炎の治療とは
患者様にとって、アトピー性皮膚炎の痒みは耐え難いもので、日常生活において苦痛を感じてらっしゃる方がたくさんいます。それをうまくコントロールし、晴れやかな気分で過ごしていただくため、当院では、通院をしなくてもよい時期が来るまで、患者様に寄り添った治療のお手伝いをさせていただければと思っています。
アトピー性皮膚炎治療に使うお薬について
アトピー性皮膚炎の治療には、痒みや表面上の症状を和らげるための外用薬、体の中からアレルギー症状を抑え、免疫や体の治癒能力に働きかける内服薬、アトピー性皮膚炎の天敵である、乾燥を和らげる薬の三つを主に使用します。お薬の使用については、患者様の年齢や部位、皮膚の状態、ライフスタイル、考えられる薬のリスクを十分に把握した上で、ベストなものをご提案させていただきます。
副腎皮質ホルモン外用薬について
アトピー性皮膚炎の治療では、副腎皮質ホルモンの塗り薬を使用するのが最も一般的です。メディアの情報により、よく「副腎皮質ホルモンはよくないのでは?」というご質問を患者様からいただきますが、副腎皮質ホルモン外用薬は、熟練した皮膚科医師の指示の元でお使いいただければ安全で効果的な治療が可能になるものです。当院では、希望の方には副腎皮質ホルモンについての資料をお渡しして説明をさせていただいております。どうぞお気軽にご相談ください。
日常生活の注意点
- 入浴に関して
湯船につかるときはぬるめの温度にしてください。また体を洗う時は、刺激の少ない石けんを十分に泡立てて強く擦り過ぎないようにしましょう。 - 保湿剤の使用
肌の乾燥は症状を悪化させます。ワセリンやなどの保湿剤を処方させていただきますので、こまめに塗りましょう。 - 肌着の注意点
肌着はなるべく綿の多く含まれる柔らかいものを使用しましょう。 - 掃除
ダニやホコリはアトピー性皮膚炎を悪化させます。空気は常に清潔に保ちましょう。 - 湿度
50~60%が理想です。これ以下だと皮膚が乾燥し、これ以上だとダニが繁殖しやすくなります。 - 爪を切る
引っ掻くとよけいにアトピー性皮膚炎が悪化します。 - ストレス
多くの患者様をお会いして感じるのは、ストレスというものが大きな影響を与えるということです。まずはかゆみをしっかりとコントロールして痒みのストレスを少なくしましょう。